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良質な窒化アルミニウム(AlN)づくりへの挑戦。

1980年、製造業では半導体の技術競争が激化しつつあった。
この年、「画期的セラミックス材料を開発して、トクヤマの新事業の一つにしよう」との信念のもと、神奈川県藤沢市に新設された研究所において、新しい研究がスタートした。
「どの材料を選択するか迷いながら、まずは、酸化物をカーボンで還元する方法でいろいろな窒化物や炭化物を試作することから始めた」と語るのは、当時、研究にあたった倉元信行(現・取締役 研究開発部門長)。
倉元は、1977年から約2年、科学技術庁の「無機材質研究所」へ派遣され、サイアロンというセラミックス(Si-Al-O-N)を常圧焼結(緻密化)する研究に取り組んだ実績があった。「ファインセラミックスを高温で焼き固めると、さまざまな機能を持ったセラミックスに変貌する……」そんなセラミックス研究の醍醐味が、倉元のトクヤマでの研究心に火を着けたのである。

窒化アルミニウム粉末
窒化アルミニウム粉末
理想を現実のものにした研究成果。

基礎研究の段階で、材料が新規品であることに起因し、化学物性・物理物性評価法の開発も必要となった。それらを一つずつ自社技術として構築していくことに、研究者としての苦労があったが、同時に次なるステップへの礎となった。
研究を重ねたある日。アルミナを原料として初めて合成したAlNの粉末をホットプレスしたとき、今までの黒いものとは様子の違うものができあがったのである。薄く削って日にかざすと、倉元の指の影が動いた。

「超高純度でシャープな分布のAlN粉末を焼結すれば、透光体ができる!」
「その熱伝導をはじめとする物性は、単結晶に近い理想的なものになる!」

倉元と谷口(現・理事 つくば研究所長)は、歓喜の声をあげた。81年暮れのことだった。 以降、二人の研究は、「透光性AlNセラミックスと、その原料粉末の開発」へとシフト。約1年の実験を経て、遂に透光性の焼結体が完成した。アルミナをカーボンで還元しながら窒化する事によって高純度のAlN粉末を合成し、これを原料として工業的な量産法である常圧焼結法によって超高純度で緻密な新セラミックスを製造することに成功したのである。

この透光性AlNセラミックスの熱伝導率を測定した結果、金属アルミ二ウムとほぼ同等という値を達成。さらに、高強度、半導体シリコンに近い熱膨張率などの特徴を有することが判明した。

「これなら、高出力ICチップの放熱問題も解決できる!」

新セラミックスの優れた特性は、高熱伝導・絶縁AlN基板開発への大きなステップとなった。 トクヤマでは、この新しい高純度窒化アルミニウム粉末(※1)とセラミックスを物質特許として申請。これは単一の窒化物の透光体を常圧焼結で作った世界最初の事例となった。84年、トクヤマは、AlN粉末(※2)、AlN顆粒(※2)、そして『シェイパルR』(※3)と名付けられた透光性AlNセラミックスの技術資料を公開し、世界的な注目を集めることとなった。 半導体実装の現場では、半導体の高密度化、ハイパワー化の流れの中で、半導体から発生する熱をどう処理するかが大きな問題点となっていた。このような時に絶縁性でかつ高い放熱性を有するAlNの出現は、まさに時代のニーズを捉えたのである。

シェイパル(R)
メタライズ基板
メタライズ基板
シェイパル加工例
シェイパル加工例
新・窒化アルミニウムの実力。

トクヤマではこの発明を基に、工業材料として実績のなかったAlNの事業化に世界にさきがけて取り組み、品質面での評価にめどを得たことから量産化に踏み切る。AlN原料粉末、セラミックス、さらにはAlNセラミックス上に金属や合金の薄膜あるいは厚膜を施したメタライズ基板の製品化に成功し、多くの実装実績を上げている。
具体的には、大型コンピューターやスーパーコンピュータの冷却部材、ドイツ新幹線を始めとする国内外の電車の電源用絶縁板、DVDなどに使用するレーザーダイオード用の基板、ハイブリッド・カーなどの自動車のコントロール・モジュール用基板など多くの最先端半導体の実装に、このAlNが使用され、工業材料としての地位を固めるまでになった。 さらに、トクヤマでは、本特許を米国の大手化学メーカーなどにライセンスを供与している。 98年にはそうした実績が認められ、「高機能AlNセラミックスの発明(特許第1579756号)」により、「内閣総理大臣発明賞」(※4)を受賞した。

AlNは、高熱伝導率・高絶縁性という特性を生かした放熱基板用素材として、新しい用途開発が行われてきた。従来はセラミックス(アルミナやベリリア)・金属材料等が放熱基板として用いられていたが、これらの材料との比較でその優位性が認められ、市場への浸透が進んできた。
これからは、耐プラズマ特性や高周波特性など、AlNならではの機能を活かした分野への展開に大きな期待がもたれている。AlNは、情報処理分野、自動車・車両分野、光通信分野、半導体分野をはじめ、最先端技術を要する幅広い分野で、さまざまなニーズに応える素材として活用され続けることだろう。

レーザーダイオード用基板
レーザーダイオード用基板
電車、電気自動車用IGBTヒートシンク
電車、電気自動車用IGBTヒートシンク
トクヤマの窒化アルミニウム製品についてもっと詳しい情報をご希望の方は、以下までお気軽にお問い合わせ下さい。

株式会社トクヤマ シェイパル営業部
TEL: 03-3597-5135
FAX: 03-3597-5144
E-mail: shapal@tokuyama.co.jp
所在地: 〒150-8383 東京都渋谷区渋谷3丁目3番1号 渋谷金王ビル
(所在地地図)
※1)

セラミックの基板を焼成する原料。一次粒子径は約0.6ミクロン、凝集粒子の平均径は約1.8ミクロンと非常に細かく、安定性に優れる。高熱伝導焼結体やサイアロン系化合物の原料、各種の添加剤として利用される。

※2)

粉末を取扱い易くしたもの。セラミック焼結体の原料として、プレス加工による大型部材の製造等に用いられる。

※3)

『シェイパル』優れた透光性を持つセラミックス基板。
特長1:高熱伝導・電気絶縁性
放熱部材として従来用いられていたアルミナの約10倍の熱伝導率を誇る。各種放熱絶縁部材として好適。
特長2:Siに近い熱膨張率
ICチップ材料のSiに近い熱膨張率を誇り、熱サイクルによる剥離が起こりにくく、大型チップを搭載する放熱部材として適している。
特長3:優れた耐食性
ハロゲンプラズマなどの使用環境下での構造材料として好適(半導体製造装置)。
特長4:易機械加工性
形状・面精度の点で、高付加価値化に対応。

※4)

「平成10年全国発明表彰内閣総理大臣発明賞」。「人工鉱物の一つであるAlN・セラミックスの純度及び特性を著しく改善し、さまざまな半導体分野におけるこの材料の実用の基礎を作ったもの」として、発明者である倉元信行、谷口人文、さらに発明実施功績者・三浦勇一社長(当時)が受賞。

※5)

従来高放熱性のセラミックスとして使用されていた酸化ベリリウムは毒性を有していたが、AlNへの置き換えにより、環境問題にも貢献している。

 
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